✈️ 新章・就活編
ⅰライセンスの先にある世界…..
ATPLのすべての試験を終え、結果用紙を手にしたとき、胸に広がったのは歓喜というよりも、ひとつの章が確かに閉じたという静かな実感だった。
全教科合格。
長かった試験の日々は終わった。
だが同時に、はっきりと分かっていた。
ここからが本当のスタートだということを。
資格は揃った。
だが、まだ空は仕事ではない。
これからは「受かるかどうか」ではなく、「選ばれるかどうか」の世界だった。
ニュージーランドでのパイロットの仕事探しは、履歴書よりも会話が先に来る。
ラウンジでの雑談、フライト後のコーヒー、何気ない一言。
そんな中で、ふと耳にした地名があった。
クイーンズタウン。
その名前を聞いた瞬間、胸の奥が少しだけ熱くなった。
そこは、俺にとってまったく知らない土地ではなかった。
大学時代、そしてワーキングホリデーの頃に滞在した町。
右も左も分からず、それでも必死に生きていた、あの頃の記憶が一気によみがえる。
湖畔の冷たい朝。
山に反射する夕焼け。
そして、何も持たずに「いつか飛ぶ」と口にしていた、若い自分。
ある意味――里帰りだった。
「観光フライトの仕事があるらしい」
「機体はCessna 206だ」
その会話の続きを聞く前に、条件は分かっていた。
206を飛ばせなければ、話は始まらない。
俺はログブックを開き、そして閉じた。
時間はある。
だが、206の資格はなかった。
待つ理由はない。
行く理由なら、山ほどあった。
向かったのは、クイーンズタウンのワカティブ・エアロクラブ。
観光地の華やかさとは裏腹に、クラブの空気は落ち着いていて、実務的だった。
ここでは山を飛ぶことは特別ではなく、日常だった。
206の資格取得を決めたとき、同時に告げられた必須条件。
マウンテンフライトコース。
山岳フライトは技量ではなく、姿勢が問われる。
最初のブリーフィングで、インストラクターは淡々と言った。
「山は美しい。
だから、人は簡単に騙される」
Cessna 206のエンジンがかかると、低く力強い振動が伝わってくる。
谷に入った瞬間、空気が変わるのが分かった。
風は一定ではなく、斜面で砕け、機体を試すように揺らす。
「今、何が起きてる?」
その問いに即答できなければ、次はない。
操縦桿の重さ、機首のわずかな変化、音。
すべてが判断材料だった。
海岸線でのフォースドランディング訓練では、
波の向き、風、砂の硬さを瞬時に読むことを求められた。
完璧な場所は存在しない。
選ぶのではなく、決断する訓練だった。
雪の上空では、距離も高度も信用できない。
白はすべてを覆い隠す。
見えているものほど、疑え。
「目で飛ぶな。知識で飛べ」
その言葉は、深く胸に刻まれた。
フライトが終わり、プロペラが止まる。
山は何事もなかったかのように、静かにそこにあった。
ログブックに新しい記載を書き込む。
Cessna 206。
Mountain Flight Course 修了。
それは資格というより、
「この空域に戻ってくる覚悟はあるか」という問いへの答えだった。
かつて何者でもなかった自分が過ごした町。
その空に、今はパイロットとして立っている。
クイーンズタウンの空は、昔と変わらず美しく、そして厳しい。
エンジンはもう温まっている。
あとは――
この空が、俺を仕事として迎え入れてくれるかどうかだ。
今日はここまでにします。 果たして初仕事の行方はいかに….😿

C206 flying over Lake Wakatipu
エアラインパイロット憧れ….. エアラインの仕事じゃなぁ~ゐ😿憧れてはいますよ😅
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