✈️Voyage 86. Shibaのエアラインパイロットなっちゃった大冒険記

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✈️怒涛のマレーシア編

Ⅶ.再び、計器だけの世界へ

DCA学科試験も順調に進み、いよいよ本格的なフライト訓練が始まった。

今回の訓練は、

MIR(Multi Engine Instrument Rating)

双発機による計器飛行訓練である。

実は、計器飛行そのものが初めてだったわけではない。

ニュージーランドでCPLを取得した後、オーストラリア・ブリスベンへ渡り、ライセンスをCASAへコンバージョンした際にも、IR(計器飛行証明)のリカレント訓練を受けていた。

基本的な考え方は理解している。

しかし、久しぶりの本格的な計器飛行。

しかも今回は双発機

コックピットへ乗り込む瞬間、自然と気持ちが引き締まった。


■ 計器だけを信じて飛ぶ

この日の教官は、ターバンを巻いたシーク教徒のインストラクターだった。

第一印象は、正直ちょっと怖そう(笑)。

ところが、飛び始めると印象は一変した。

「Look at your instruments.」

「Don't chase the needles.」

「Think ahead.」

短い言葉だったが、その一つひとつが計器飛行の本質を突いていた。

計器飛行では、外の景色だけを頼りに飛ぶことはできない。

姿勢。

速度。

高度。

方位。

航法。

そしてATCからの指示。

目の前にある情報を整理しながら、常に一歩先を考えて飛行する。

計器飛行とは、単に計器を見ながら操縦することではない。

むしろ、

「自分自身をコントロールすること」

なのかもしれない。


■ 訓練機はPiper PA-34 Seneca

このとき使用していた訓練機は、

Piper PA-34 Seneca。

双発の訓練機である。

この日の訓練ルートは、ほぼ毎回決まっていた。

マラッカを離陸。

ATCからクリアランスを受け、Airway(航空路)へ。

そしてジョホールバル方面へ向かう。

ILSアプローチ。

Go Around。

Holding。

VORアプローチ。

そして再びAirwayに沿ってマラッカへ戻る。

一見すると、単純な往復飛行に見える。

しかし、その中にはエアラインパイロットとして必要になる計器飛行の基本が、ぎっしり詰め込まれていた。

飛行機を操縦するだけではない。

ATCとのコミュニケーション。

航法。

飛行管理。

アプローチの判断。

そして、予想外の事態への対応。

一つのフライトの中で、同時にいくつものことを考えなければならない。

これが計器飛行だった。


■ そして、Engine Failure

そして、この訓練で最も印象に残っているのが、

Engine Failure(片発停止)。

教官が突然、片方のエンジンの出力を絞る。

その瞬間――

機体が片側へ向きを変えようとする。

反射的にラダーを踏み込む。

……

重い。

とにかく重い。

「こんなに重かったっけ……?」

教科書では何度も勉強している。

訓練でも、その手順は理解している。

しかし、実際にセネカで体験すると、まったく違う。

片発になると、左右の推力バランスが崩れる。

その状態で機体を安定させるためには、ラダーをしっかり踏み続けなければならない。

足にかなりの力が必要になる。

まさに、

「知っている」と「実際にやる」は違う。

という瞬間だった。

双発機だから安心。

エンジンが二つあるから大丈夫。

そんな単純な話ではない。

むしろ、エンジンが一つ止まったときにどう飛ぶのか。

そのとき、パイロットがどう判断するのか。

そこまで理解して初めて、双発機を操縦する意味がある。


■ 訓練が終われば、いつものマレーシア

数時間の訓練を終え、マラッカへ戻る。

汗だくのままコックピットを降りると、いつもの蒸し暑い南国の空気。

訓練の緊張感から解放される瞬間だった。

そして、コンドミニアムへ帰る前に立ち寄るのも、いつもの屋台。

注文するのは、

ナシレマ。

そして飲み物は、

コピ・オー・アイス(Kopi O Ais)。

実は、マレーシアへ来たばかりの頃は、毎日のように**テタレ(Teh Tarik)**を飲んでいた。

あの甘さも、マレーシアらしくて好きだった。

……最初は(笑)。

しかし、

あまりにも甘い。

その甘さに少しずつ懲りてきて、いつの間にかブラックのアイスコーヒーを頼むことが増えていった。

暑いマレーシアで飲む、キンキンに冷えたコピ・オー・アイス。

これがまた、うまい。

ナシレマを頬張りながら、その日のフライトを思い返す。

「セネカのラダー、本当に重かったな……。」

そんなことを考えながら、翌日の訓練に備えて部屋へ戻る。


■ 毎日のフライトが、少しずつ未来につながっていく

振り返れば、この頃は毎日が勉強だった。

毎日のフライト。

毎日のブリーフィング。

毎日の英語。

そして、一つひとつの失敗や発見。

それらすべてが、少しずつ自分の経験になっていった。

海外でパイロットを目指すということは、単純にライセンスを取得することだけではない。

国が変わればルールも変わる。

訓練環境も変わる。

言葉も変わる。

文化も変わる。

その環境の中で、自分自身が適応していかなければならない。

ニュージーランド。

オーストラリア。

そして、ここマレーシア。

それぞれの国で経験したことが、後になって大きな財産になっていった。

一つひとつのフライトが、少しずつエアラインパイロットへの距離を縮めてくれていた。

そして、マレーシアでの訓練も、いよいよ終盤へ向かっていく。


✈️今回はここまでにします……

エアラインパイロットの憧れ……。

計器だけを頼りに飛ぶ世界。

そして、双発機の片発停止。

実際に操縦してみなければ分からない「重さ」がそこにはありました。

そして、訓練の疲れを癒やしてくれたのは、ナシレマと冷たいコピ・オー・アイス。

甘すぎるテタレとは、しばらく距離を置くことになったのでした(笑)。

次回も、マレーシアでのパイロット訓練の続きをお届けします。✈️🇲🇾

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