【✈️コックピット裏話】 エアラインパイロットの給料ってどう決まるの? 実は、働いた時間と給料は必ずしも同じではありません。
【序章】
「パイロットって給料が高いんですよね?」
講演会や説明会で、よくいただく質問です。
続けて、
「時給制なんですか?」
「残業したら、その分給料も増えるんですか?」
という質問を受けることもあります。
一般の会社では、
働いた時間=給料
というイメージがあるかもしれません。
しかし、私が長年勤務してきた海外エアラインでは、その考え方は少し違いました。
実は、航空業界には
Duty Time(勤務時間)
Flight Time(会社が管理する飛行時間)
Air Time(実際に空を飛んでいる時間)
という、それぞれ役割の異なる「3つの時間」があります。
今回は、あまり知られていないエアラインパイロットの給与と勤務時間の仕組みについて、私自身の経験を交えながらご紹介したいと思います。
【Duty Time ~安全を守るための時間~】
まず一つ目が、
**Duty Time(勤務時間)**です。
私が勤務していた海外エアラインでは、Duty Timeは基本的にShow-up(出勤)から、到着後にドアを開け、飛行後の業務を終える約30分後まででした。
ホームベースから出発する便では、Show-upは出発時刻の約2時間前。
一方、ステイ先(Layover)から出発する便では、Show-upは約1時間前という運用でした。
Duty Timeには、
・Flight Releaseの確認
・Weather・NOTAMの確認
・Crew Briefing
・保安検査
・コックピット準備
・飛行後の書類作成、オフィスへの提出
など、飛行機を操縦していない時間も含まれます。
つまり、
**Duty Timeとは、「働いている時間」**です。
そして、この時間は疲労管理(Fatigue Management)のため厳しく管理されています。
勤務開始時刻によって、その日に勤務できる最大時間(Flight Duty Period:FDP)が決められています。
悪天候やATCによる遅延など、やむを得ない事情がある場合には、一定の条件のもとで機長の判断により勤務時間を延長できることもあります。
しかし、それでも安全に運航できる範囲を超えると判断された場合は、クルーチェンジ(乗務員交代)や運航計画の変更が行われます。
航空業界では、
「予定どおり飛ばすこと」よりも、「安全に飛べる状態を維持すること」が最優先なのです。
【Air TimeとFlight Timeは違います】
一般の方が「飛行時間」と聞いて思い浮かべるのは、
離陸から着陸まで
ではないでしょうか。
これは航空業界では、
Air Time
と呼ばれます。
一方で、給与や運航実績などに用いられることが多いのが、
Flight Timeです。
私が勤務していた海外エアラインでは、
Door CloseからDoor Openまで
をFlight Timeとしていました。
一方、航空会社によっては、
Off Chocks(車輪止めを外した時点)からOn Chocks(車輪止めを設置した時点)
をFlight Timeとしている会社もあります。
つまり、
Air TimeとFlight Timeは、必ずしも同じではありません。
【では、給料はどう決まるのでしょう?】
ここからが、多くの方が驚かれるところです。
私が勤務してきた海外エアラインでは、給与はDuty Time(勤務時間)ではなく、Flight Timeを基準に計算されていました。
ただし、これはあくまで私が勤務してきた海外エアラインでの一例です。給与体系やFlight Timeの定義は、航空会社や国、雇用契約によって異なります。
また、会社によっては、路線ごとに基準となるFlight Timeや支給額が設定されている場合もあります。
その理由は、実際の飛行時間だけを基準に給与を計算すると、結果として運航時間が長い便ほど有利になってしまう可能性があるためです。
もちろん、安全運航が最優先であり、意図的に時間を延ばすような運航は認められません。しかし、あらかじめ路線ごとに基準を設けることで、給与の公平性を保ちながら、安全で効率的な運航を実現しています。
例えば、私が勤務していた会社では、
- 月70時間分のFlight Timeを基本給として保証
- 70時間を超えたFlight TimeはFlight Time Allowanceとして追加支給
- Layover(宿泊を伴う乗務)の手当
- その他、会社規定による各種Allowance
といった給与体系でした。
また、税金など必要な控除は会社側で処理されていたため、毎月口座へ振り込まれる給与は基本的に**Net Salary(手取り額)**でした。
つまり、一般的な会社のように、
「今日は12時間働いたから、その分残業代が増える。」
という考え方ではなく、
「安全を守るための勤務時間」と「給与を計算するための飛行時間」は、それぞれ別の目的で管理されていたのです。
【代表の一言】
「時間」と一言で言っても、航空業界ではその意味が違います。
Duty Timeは、安全と疲労を管理するための時間。
Air Timeは、実際に空を飛んでいる時間。
Flight Timeは、運航実績や給与計算の基準となる時間。
同じ「時間」でも、その役割はまったく異なります。
こうした仕組みがあるからこそ、パイロットは無理をして飛ぶのではなく、安全を最優先に判断できます。
給与の仕組み一つを見ても、航空業界が「効率」よりも「安全」を重視していることが伝わるのではないでしょうか。
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【Author】
Haruo Shibasaki
Founder, Sora Fun Entertainment
Airline Pilot / A320 First Officer
Total Flight Time: 7,000h (A320: 4,000h)
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