✈️Voyage 76. Shibaのエアラインパイロットになちゃった大冒険記

query_builder 2026/06/20
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✈️Ⅷ. 八重洲の夜


東京・八重洲。


紹介された店は、飯田橋とはまったく違う空気をまとっていた。


店の扉を開けた瞬間、思わず苦笑した。


「ああ、相変わらずだな……」


そこにいたのは、いわゆる“普通”から少しはみ出した人たちばかりだった。


進路に悩みながら働く若者。


家計を支えるため、深夜までシフトに入るおばちゃん。


昼は会社を経営しながら副業感覚で働く社長。


就職先が決まらず流れてきた人。


そして、今でいう“おなべ”のスタッフまでいた。


みんな、それぞれ事情を抱えていた。


決して順風満帆な人生ではない。


それでも、誰も下を向いていなかった。


忙しい店の中で笑い、冗談を言い合い、ときには励まし合う。


不思議なことに、その雑多な空気が心地よかった。


戦場のような金曜日


店は400席を超える大型店舗だった。


金曜日ともなれば、店内はまさに戦場。


それにもかかわらず、ホールスタッフは10人前後しかいなかった。


今振り返れば、かなり無茶な体制だったと思う。


注文を取る。


料理を運ぶ。


ドリンクを作る。


片付ける。


そしてまた走る。


気づけば、一晩で100万円を超える売上になる日もあった。


当時としても、かなり大きな数字だった。


空へ戻るための燃料


忙しい毎日だったが、その分だけ収入も大きかった。


働けば働くほど、そのまま結果として返ってくる。


気づけば、月の手取りが50万円を超えることもあった。


当時の自分にとって、それは単なる生活費ではない。


もう一度空へ戻るための資金だった。


夢を諦めるためのお金ではない。


夢を続けるためのお金だった。


すれ違いの時間


そんな慌ただしい日々の中で、彼女もできた。


生活リズムは決して合わない。


自分が帰宅する朝に、彼女は仕事へ向かう。


短い時間しか会えなかったが、その時間に将来の話をすることもあった。


これからどうするのか。


何を目指しているのか。


答えのない話を何度も繰り返した。


だが、どんな話をしていても、自分の頭のどこかには飛行機があった。


地上で働いていても、空への憧れだけは消えなかった。


遠回りではなかった


今振り返れば、本当に若かったと思う。


がむしゃらで、一直線で、周りが見えていなかった。


それでも、止まりたくなかった。


空への想いだけは、絶やしたくなかった。


だから自分に言い聞かせていた。


「これは遠回りじゃない」


「今は助走なんだ」


そして、その頃の自分はまだ知らない。


八重洲の夜が、人生最大の転機へとつながっていくことを――。



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