Ⅹ 風向きは変わる。だが飛ぶのはまだ終わらない
三日間にわたるATPL地上試験の戦いが終わった。
時計を見たとき、俺はしばらく席から立ち上がれなかった。
頭はカラッカラで、E6B(Navコンピューター)の円盤をまだ回しているような気さえした。
腕はだるく、背中は痛く、心は燃え尽き寸前。
「終わった……いや、本当に終わったんだよな?」
教室を出ると、同じように魂が抜けた仲間たちが廊下に座り込んでいた。
子供用チャリで帰る体力が残っていないので、押しながらとぼとぼ歩いた。
空はやけに澄んでいて、軽やかに風が流れていた….. 「とりあえずマルチードでお疲れ一杯だな!! ナワブはムスリムだから酒飲めんので、ヒロでも誘うか!?」
■そして迎えた結果発表の日。
封筒を開ける手が震える。
深呼吸して紙を引き出す。
その瞬間、心臓が跳ね上がった。
――7科目中、4科目合格。
3科目、不合格。
しばし呆然。
だが次の瞬間、目に飛び込んできた一行に、膝が抜けそうになった。
Flight Planning:Pass(ぎりぎり)
「……っしゃあああああ!!!!!」
思わず声が出た。
誰が見ていようと関係ない。
あの3時間半の地獄、風向と風速に翻弄され、片発ドリフトダウンに泣き、ネーサンの“解ける問題からやれ”の言葉に救われたあの科目。
それが――ギリッギリの合格。
紙面上のたった数ポイントの差。
でも俺には、そこに滑走路一本分の価値があった。
■だが現実は甘くない。
不合格の3つは、
Air Law(法律地味に難しい)
Aerodynamics & Systems(大型機の知識がエグい)
Performance and Loading(数字パラダイス)
この三兄弟。
どれも骨太。
どれも“また勉強漬けの日々”を意味していた。
さらに追い討ちをかけるように、マレッサから連絡が来た。
「ビザの関係で、一度オーストラリアを出国しないとね…」
一瞬、頭の中でATC(航空管制)の声が聞こえた。
――“Unable. Negative. What!?”
しかし規則は規則。
ここは抵抗しても仕方がない。
俺は深く息を吸った。
「よし、じゃあ一回ニュージーランドのクライストチャーチへ戻るか。」
あの街は静かで好きだった。
風も優しいし、飯も旨い。
ちょっと心と体を整えるにはちょうどいい。
それに、またオーストラリアへ戻ってくるつもりだった。
ATPLの合格という目的地は、まだ遥か先。
燃料は減っているが、エンジンはまだ止まっちゃいない。
■ナワブからのメッセージ
その夜、寮を出る準備をしていると、ナワブからメッセージが届いた。
「お前、また戻ってくるんだろ?
そのときは俺がPerformanceを叩き込んでやるよ。
でもKidsチャリだけは買い替えろ。恥ずかしい。」
思わず笑ってしまった。
「言われなくても買い替えるわ!」
彼は今回、何教科合格したかは教えてくれなかった….
とりあえず、人の結果を気にする余裕もなかったのであえて触れなかった….
荷物をまとめて、子供用チャリを寮の裏にそっと置く。
夜風が心地よい。
暗い道路の向こうに、次の挑戦の滑走路が見える気がした。
まだ終わっていない。
飛行計画は続いている。
そして俺は――必ず戻る。
そう誓いながら、俺は静かに夜空を見上げた。
そしてこの苦行に耐えたご褒美にヒロと地元のビール XXXX を浴びるほど呑んだことは言うまでもない(笑)
その後、俺はスマホを手に取った。
まず連絡したのは、あの二人――ジェーンとムサウ。
メッセージを送ると、すぐに返信が届いた。
ムサウ:
「おお、シバ!また戻ってくるのか?
ATPLどうだった?……あ、結果はあとででいい。
とりあえずうち来い。部屋空いてるし、家賃いらん。」
家賃いらん……!
その一行に、心のどこかで「救われた…」と呟いた。
オーストラリアの滞在費で財布はミニマム燃料状態。
ムサウの申し出は、まるでオーバーラン寸前に現れたセーフティエリアのようだった。どのみちごり押しのつもりだったので助かったぁ😿
ジェーン:
「シバ!あなた戻ってくるのね!
ATPLはどうだった?報告しにうちに寄りなさいよ。
久しぶりにティーでも飲みながら、ゆっくり話しましょ。」
相変わらず落ち着いた文面。
NZで最初にできた友達で、何かあればいつも励ましてくれた人だ。
報告と言いつつ、半分は俺の様子を心配しての連絡だろう。
俺は荷物の上に座り、返事を打った。
「ムサウ、泊めてくれてマジ助かる。
ジェーン、絶対寄るよ。今回の戦い、ちゃんと話す。」
送信してスマホを置いた瞬間、胸の奥にふっと灯がともった気がした。
オーストラリアで失敗しても、NZには帰る場所がある。
そう思うと、不合格の痛みも少し和らいだ。
翌朝、子供用チャリ(まだ乗ってる)を寮に置き去りにして空港行きのバスに乗り込んだ。
窓の外に流れる景色を眺めながら、心の中で呟く。
「ジェーン、ムサウ……またよろしく。
そして次は、すべて南の島へ向かう飛行機は、夕陽を浴びて金色に輝いていた。
まるで、また一歩――飛び立つ準備が整ったかのように
今日はここまでにします。
アラインパイロットの憧れ。。。。道半ば精進😿
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