新章 ATPL座学編
ⅰいざオーストラリア大陸へ
南半球の4月、あの朝、クライストチャーチの空は、やけに澄んでいた。
街路樹の葉がパリパリと音を立てて舞っていた。
初冬の始まり。冷たい空気が、胸の奥のざわめきを少しずつ落ち着けてくれる。
「ああ、本当に行くんだな。」
バックパックひとつ
帰りのチケットはない
戻らない前提....
そんな旅立ちは、静かで、凛としていた僕はジェーンにさりげなく「行ってくる」と告げた。彼女は振り返らずにコーヒーを淹れながら、「帰ってくるとは言わないのね」とだけ言った。言葉にはしなかったけれど、これから旅立つ自分への激励に感じた。私は心の中で強くうなずいた。戻らない旅。最小限の荷物を詰めたバックパックひとつだけが、これからのすべてだった….
飛行機はブリスベン行きのBoeing 767。まだニューヨーク同時多発テロ前の自由な時代、キャプテンにお願いすると笑顔で「どうぞ」とコックピットに招き入れてくれた。大きな窓から見下ろすのは純白の雲海と青い空。機長がゆっくりと計器の動きを説明してくれ、「君もいつかここに座るのかもしれないな」と優しく声をかけたその瞬間、胸の奥が熱くなった。心底ここで仕事をしたいという感情がこみ上げたのは今でも覚えてます。まさか実現するとは当時の私には想像できなかったことでしょう…..
ブリスベン空港に降り立ち、ローマ・ストリート駅へ向かう。そこからサンシャインコーストへ向かう鉄道に乗り換えた。車窓の外にはユーカリ林や牧場が広がり、のんびりとした時間が流れている。車内は静かで、制服姿の学生や家族連れが思い思いの時間を過ごしていた。僕はぽつんと自分の存在を感じながら、「あの街に残ることもできたけど、新しい空を選んだ」と呟いた。
夕暮れどき、列車は終点のNambour駅に滑り込む。小さなホームに差し込む夕陽の光が優しく迎えてくれた。駅前でしばらく待ち、サンシャインコースト空港行きのローカルバスに乗り込む。エンジンの音が低く響き、窓の外からは潮風の匂いが少しずつ強くなる。サーフショップやカフェのパラソルが揺れ、サーフボードを抱えた地元の人たちの笑い声が聞こえた。初冬のはずなのに、陽射しはやわらかくて温かい。
バスは海沿いの小高い丘に差し掛かり、白い校舎と小さなコントロールタワーが見えた。Adnance Flight Theory――この小さな飛行学校こそ、これからの僕の新しい舞台だ。受付でスタッフ(たしかマレッサ)に迎えられ、手続きを済ませるとすぐに寮まで案内された。校舎から歩いて10分くらい離れた2階建てのユニットハウスの1階の部屋に案内され、単純にベッドと机があるだけ、窓の外には夕陽が静かに沈みかけていた。
夜、電気を消してベッドに横になると、遠くから波の音がかすかに聞こえてくる。バックパックをほどき、ノートを開き綴った。あのBoeing 767のコックピットで見た青空、鉄路の窓から見たオレンジ色の世界、そしてこの街で始まる新たな旅。誰も知らない場所で、誰も知らない未来が待っている。でも不思議と怖くはない。窓の外には滑走路の灯りが淡く輝き、数日後からの朝から始まる新生活の鼓動が聞こえてくるようだった。
To be continued…
次回、Sunshine Ground Schoolでの日々が始まる。
エアラインパイロットの憧れ。。。。767のキャプテンあなたがホンマに火をつけました!!!
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