✈️ある出来事から考えたこと ― パイロットを育てるということ ―
Sora Fun Entertainmentを立ち上げて、まだそれほど長くありません。
ありがたいことに、これまでいろいろな受講生と関わる機会がありました。
その中には、順調に進んでいく人もいれば、なかなか思うように進まない人もいます。
今日は、その中で私自身が指導者として考えさせられた、ある受講生との出来事について書いてみたいと思います。
もちろん、個人が特定されないように内容は匿名化しています。
「教える側」だけでは、どうにもならないことがある
パイロットの訓練というと、
「良い先生が教えれば、上手くいく」
そんなイメージを持つ人もいるかもしれません。
もちろん、指導する側の責任はあります。
何を教えるのか。
どう教えるのか。
どのタイミングで教えるのか。
そこは指導者として、常に考えなければいけません。
しかし、実際に受講生を指導してみると、もう一つ非常に大切なものがあることに気付きます。
それは、
「本人が学ぶ気持ちを持っているか」
ということです。
どれだけ資料を用意しても。
どれだけ時間を使って説明しても。
どれだけ質問を待っていても。
本人が動かなければ、知識は身につきません。
「分からない」と言えること
今回のケースでも、私は何度も考えました。
分からないことがあるなら、聞けばいい。
勉強方法が分からないなら、相談すればいい。
試験に不安があるなら、早めに言えばいい。
訓練について困っているなら、こちらに伝えればいい。
実際、指導する側は「質問してくれること」を待っています。
なぜなら、質問があれば、その人がどこでつまずいているのか分かるからです。
ところが、質問がなければ、こちらから見えるのは「順調に進んでいるのかな」という姿だけです。
そして試験やチェックの結果が出た時に、
「えっ、そこが分かっていなかったの?」
となることがあります。
これは、指導者にとっても非常に難しいところです。
パイロットに必要なのは「分かったふり」ではない
パイロットの世界では、
「分かりません」
と言えることは、決して恥ずかしいことではありません。
むしろ、安全のためには非常に重要です。
分からないのに「分かった」。
不安なのに「大丈夫」。
理解していないのに「Yes」。
こうした小さな積み重ねが、航空の世界では大きな問題につながる可能性があります。
だからこそ、私は受講生に、
「分からなかったら聞いてください」
と伝えます。
そして、
「間違っていたら、間違っていたと言ってください」
とも伝えます。
経歴があることと、今できることは別
今回の出来事を通して、もう一つ感じたことがあります。
それは、
過去の経歴と、今の実力は別物だということです。
以前どこの会社にいた。
何時間飛んだ。
どんな資格を持っている。
そうした経歴は、もちろん大切です。
でも、パイロットの世界では、それだけで未来が保証されるわけではありません。
新しい機種に乗るなら、新しいことを学ばなければならない。
新しい会社に入るなら、その会社のやり方を覚えなければならない。
そして、試験を受けるなら、試験に向けて勉強しなければならない。
当たり前のことですが、
「過去に飛んでいたから、今回も大丈夫」
とは限りません。
資格を取ることがゴールではない
SFEが大切にしているのは、資格そのものではありません。
もちろん、ライセンスは必要です。
試験にも合格しなければなりません。
でも、それはパイロットとしてのスタートラインです。
その先にあるのは、
「この人と一緒に飛びたい」
と思ってもらえるパイロットになること。
知識だけではなく、
判断できること。
相談できること。
意見を言えること。
間違いを認められること。
そして、自分自身を管理できること。
こうしたものまで含めて、私は「プロのパイロット」だと思っています。
指導者も、万能ではない
今回の出来事で、私自身も反省する部分があります。
もっと早く気付けなかったのか。
もっと違う伝え方ができなかったのか。
もっと本人が相談しやすい環境を作れなかったのか。
指導する側だからといって、何でも分かるわけではありません。
だからこそ、私自身も学び続けなければいけない。
そして、受講生との出来事一つ一つを、次の指導に生かしていかなければいけないと思っています。
「育てる」と「甘やかす」は違う
パイロットを育てる仕事をしていると、
「どこまで手を差し伸べるべきなのか」
という難しい問題にもぶつかります。
何でもこちらがやってしまえば、一時的には楽です。
しかし、それでは本人の力になりません。
答えを全部渡すのではなく、
自分で考える力を身につけてもらう。
失敗したら、なぜ失敗したのかを一緒に考える。
そして、次は自分で修正できるようにする。
私は、それが本当の意味での「指導」だと思っています。
結局、最後に飛ぶのは自分自身
どれだけ良い学校に行っても。
どれだけ良い教官に出会っても。
どれだけ良い教材を使っても。
最後に勉強するのは自分。
最後に訓練するのも自分。
そして、コックピットで判断するのも自分です。
だからこそ、パイロットを目指す人には、
「誰かが何とかしてくれる」
ではなく、
「自分の未来は、自分で取りに行く」
という気持ちを持ってほしいと思っています。
おわりに
今回の出来事は、私自身にとっても決して楽しい経験ではありませんでした。
でも、指導者として考えさせられることがたくさんありました。
受講生に何を教えるのか。
どこまで支えるのか。
そして、どうすれば「自分で考えて、自分で進める人」を育てられるのか。
Sora Fun Entertainmentは、ただ資格を取るための場所を作りたいわけではありません。
知識ではなく、経験を。
答えではなく、考え方を。
資格ではなく、プロとしての姿勢を。
これからも、私自身が指導者として学び続けながら、次の世代へ技術を継承していきたいと思います。
そして、これからパイロットを目指す皆さんには、
「免許を取ること」だけではなく、
「プロとして飛べる人になること」
を目指してほしい。
今回の出来事を通して、改めてそう感じました。
SFEの理念👇 https://sorafunentertainment.com/philosophy/ 【Author】 エアラインパイロットの仕事や海外エアラインのリアルについて、実体験をもとに発信しています。 ▶ コラム一覧はこちら👇 https://sorafunentertainment.com/column/
Haruo Shibasaki
Founder, Sora Fun Entertainment
Airline Pilot / A320 First Officer
Total Flight Time: 7,000h (A320: 4,000h)📚 関連記事一覧
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